好きな人。
「…寒いなあ……」
あの後、「ん、頑張れ」と観星に励ましの言葉をもらい、日直の仕事も終え、部活も終え、帰っているところだ。
少し目が赤くなっていて、部活で後輩ちゃんに「…どうしたんすか?先輩」と言われちゃったけど、なんとか誤魔化した。
はぁ、と息を吐くとふわっと白くなる。
見上げると、星が…見えない。
でも、澄みきった夜空は綺麗だった。
シャスシャスと、スニーカーが地面を擦る。
いつもの帰り道。
そしていつもの、コンビニ。
「…ジャンプ………」
毎週木曜日、このコンビニによってジャンプを立ち読みするのがあたしの日課だ。
でもそれだけじゃない。
例えば消しゴムが無くなった時とか、シャー芯が切れた時とか、そういう時サッと買えるように、少しだけお金を持っている。
チャリチャリーンとコンビニ入店音に迎えられ、漫画雑誌コーナーへ向かう。
そこでふと、奥にあるピンクのきらびやかなコーナーに気付く。
バレンタインチョココーナー………。
思わず足がそこに進んだ。
いろんなチョコが、可愛くラッピングされている。
コンビニクオリティのはずなのに、すごい可愛い。
観星は、何が好きかなぁ?
いろんなチョコを手にとって、見てみる。
どれも中身の写真が載ってるから、それを見て美味しそうかどうかで決める。
どれがいいかなぁ?
とりゅふ?ざっはとるて?どれがどれで、何がなんだかよく分かんない。
だってあたし、バレンタインには縁もなにもなかった女子だから。
友チョコやってるけど、毎年ココアクッキーだから。
皆から友チョコもらうけど、何が何だかわからず食べてるし。いいの、どれも美味しいし。
「あ、これ可愛い」
あたしが手に取ったのは水色で星型の箱に入ってるチョコ。
中身は…、ブラウニー。
『やわらかしっとり』って書いてあるけど、じゃぁチョコって感じじゃないのかな?
クッキーみたいな?小分けされたケーキ?
とにかく美味しそうだし、良いなぁ!
あたしはそのほかに何も考えず、レジに向かった。