好きな人。
次の日、いつもよりドキドキしていた。
いつもより、髪の毛を丁寧にとかした。
カーディガンの毛玉もとった。
鞄の中には、例のブラウニーがあった。
「おす、槇原」
「お、はよう!観星!」
昨日もこんな風に戸惑った挨拶をしてたなぁ、と頭のどこかで冷静な自分が笑った。
「頑張れよ、今日」
「へ?」
「渡すんだろ」
「あ、…うんっ。頑張るね」
教室に向かって去っていくその背中を見て、少し切なくなった。
髪の毛、ちょっとピンとめてみたりしたのも、気付いてないんでしょ。
こんな風にあたしがドキドキしてるって、気付いてないんでしょ。
自分があたしの好きな人だって、気付いてないんでしょ。
あたしがアンタの好きな人になりたいって願ってるなんて、……気付いてないんでしょ?