君と僕との物語
君が放課後図書室に来る日はいつも決まっていた。

水曜日。

そして帰りはいつも閉館後。

隅っこで本を読むわけでもなく、

ただぼんやりと時間をやり過ごす。

その繰り返し。

誰もいなくなった6時過ぎ、

僕は拒絶されることを覚悟で君に声をかけた。

『余計な御世話だけど、面白いから』

短編の、泣ける小説。

僕のおすすめ。

君はちょっと驚いて、でもありがとうと受け取ってくれた。

読み終わらなかった君はその日初めて本を借りて帰った。

その日から君が図書室に来る日が増えた。

『おすすめは?』

それが、君から話しかけられた第一声だった。

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