君と僕との物語
7、「君に奏でる物語」
ある朝目が覚めたら世界から“音”が消えていた。

あれ?

おかしいな?

何度も何度もそう思って“声”を出そうとしたんだ。
だけど世界は静かなままで、うんともすんとも言わなくて。

世界は雑音に溢れすぎていて、
聞きたくないことまで聞こえちゃうから、
いっそのこと何も聞こえなくなればいいのにって、
僕が本気で思っていたから世界中から音が消えちゃったんだ。

なんて、そんなことを思ったりして。

ああ、静かだ。

世界から音が無くなるなんて良い気分じゃないか。 

そんなのんきなことを考えた。

人間の“音”なんて、僕はいらない。
僕は、僕の奏でるピアノの音さえあればいい。
そう思って、今日もピアノを奏でた。いつもみたいに深呼吸して。

そして一音で思い知る。

“世界”から“音”が消えたんじゃない。

“僕”から“音”が無くなったんだって。


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