魔法がとけるまで
「リュックの中、見ましたか?」



私は、冷静に、座間さんのリュックを指差した。


「はい。財布の中から免許証や社員証らしきものが見つかって…。自分の名前が座間竜二ってことは、わかったんですが」


座間さん…竜二って名前なんや?



「竜二さん…」



私は、今知ったその名前を呟いた。座間さんは、不安げな視線を私に向けていた。



「あなたは、オレを名前で呼んでいたんですね…すみません。ぜんぜん、思い出せへんわ…」



「竜二さんが、謝ることはないです…」



私を見つめるその目を…ほんの少しの間だけ、独り占めしたい…。



「オレは、あなたとどういった関係なんですか?今のところ、ニッキューって会社の社員で、座間竜二って名前しかわからないから…」



「あなたと私の関係は」


渇いた喉を潤すようにして、ゴクンと唾を飲みこんだ。



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