魔法がとけるまで
土曜の夜
「昭和52年6月23日生まれ…」



座間さん、若く見えるけれど、結構年上なんや?結婚しててもおかしくない。



「一応、住所書いてあるけれど…。この近辺ですかね?」



座間さんから免許証を受け取って、確認する。



『29ハイツ』って、ニッキューの社員寮や。座間さんは、社員寮から自転車で職場に通っていたんや…。



「この近辺ですね…」



「女性宅を転々としながらも、自分の家はあったんや…。寂しがり屋なんかな?オレ…へへっ」



謎めいた自分自身が可笑しいのか、座間さんが笑い出した。



座間さんは、ニッキューの社員で、社員寮に住んでいる。



ごくフツーの30代男性や。それを私が、謎めいた男にしてしまった…。


「へへっ…」



やっぱり、本当のことを話せば良かった…。



明日、思い出したように切り出してみようかな?『そういえば、こんなことを話していました』といった具合に。



やっぱり、こんな嘘は、よくない。



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