魔法がとけるまで
「とりあえず、食お」



「いただきます…」



綾瀬さんの顔色を伺いながら食べる。美味しいハズのガトーショコラが、苦く感じた。



「…伸二さんは…頭もいいし、かっこいいし、優しい人やと…思います」


「…で?」



綾瀬さんは、私からフォークを奪うと、ガトーショコラをすくって豪快に頬張った。



「アイス、とけるから食べや」



「はぁ…」



『好きな人がいます』



私は、口に含んだアイスと一緒に、その言葉を飲みこんだ。



「もしかしたら、祥子」


綾瀬さん…私が言わなくても、気付いてくれた?


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