魔法がとけるまで
「ごちそうさまでした」


「家、どっちやった?送るで」



「すぐ近くですから…」


「どっち?」



綾瀬さんは、そこで初めて私の手を握った。告白された時にも手を握られたけれど…付き合い始めてからは、初めてだった。



「あ…あのマンション」


「なんや、ホンマに近いやん?」



「だから…近いって言ったのに…」



「家、もうちょっと遠かったら、手を繋ぐ時間が長かったのにと思っただけや!」



胸の奥が…ギュッと痛くなった…。



質は違うけれど、私はまた嘘つきになっている。


私を好きやと言ってくれている人に…。



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