魔法がとけるまで
「バレンシアオレンジ」


電話中の私に、綾瀬さんが通りすがりに言った。電話をしながら時計を見ると、お昼を少し過ぎていた。



「はい、わかりました。失礼します…」



お客様との電話を終え、急いでバレンシアオレンジに向かった。



「すみません、お待たせして…」



カウンター席に綾瀬さんの姿を見つけ、駆け寄った。



「祥子から誘うなんて、珍しい」



「はぁ…あの…」



「とりあえず、注文しよ?日替わりランチでええか?」



「あ、はい…」



綾瀬さんは、日替わりランチをふたつ注文して、私に視線を送った。



「土曜日は…すみませんでした」



「…で?」



綾瀬さんが煙草に火をつけた。



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