魔法がとけるまで
「それでもオマエは、竜二が好きなんやな?」



川崎さんには適わないってわかっていても…。私は、やっぱり座間さんが好きやった。



「はい」



もう、嘘はつかへん。綾瀬さんを真っ直ぐに見つめて、返事をした。



「ほな…別れなしゃーないな…。今まで通り、メシには誘うから」



私は、笑顔で頷いた。



「もし、竜二を忘れさせてほしいなら…いつでも抱いたるからな!」



「はははっ…」



綾瀬さんを好きになれたらいいのに…ぶっきらぼうな優しさに…泣けてきた。



「これから仕事やのに、泣くな。あほ」



綾瀬さんは、それだけ言うと、伝票を持って席を立った。



「ごちそうさまです」



綾瀬さんは、振り向かず、軽く右手をあげた。



私は、その背中に「ありがとう」と呟いた。


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