魔法がとけるまで
不在届
その夜、私は、定時に職場を出た。そして、行きつけの美容院に向かった。



「今日は、どうされますか?いつものように整えますか?」



私は、髪が硬くて多いから、定期的にすいてもらって軽く見せていた。でも、いつも同じ髪型で、誰からもカットしたことを気付かれない。



「こんな感じにしてほしいんです…」



私は、ヘアカタログに載っていた髪型を指差して伝えた。



「わかりました」



シャキン、シャキン…と鋭い音をたてながら、髪が切られてゆく…。この髪型に決めたのは、自分自身にケジメをつけるためだった。



「お疲れ様でした」



固く閉じていた目を開くと、鏡の前に新しい自分がいた。



「顔が小さいから、すごく似合いますよ」



顔を隠す前髪は、眉毛が見えるくらい短くなり、耳もまるだし…。



「へへっ…」



思わず、照れ笑いを浮かべた。



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