魔法がとけるまで
あの夜と同じように、私はカフェオレをいれた。


「いただきます」



座間さんは、ふぅふぅしながら、カフェオレを口にした。



「私…座間さんに憧れてました…」



「オレに…ですか?」



「はい。初めて挨拶に来られた時から…。でも」


「…でも?」



「でも私…自分に自信がなくて。『恋人』とか『婚約者』とか…そんな嘘をつけなくて」



「それで『ヒモ』か…」


ふふっ、と笑う座間さんの、きれいな笑顔にキュンとする。



「記憶を取り戻したら、私との時間は忘れさられる…魔法はとける…そう思って嘘を…」



「そっか。魔法、とけませんでしたね」



「本当にすみませんでした!」



「いやいや、そんな謝るようなこととちゃいますから」



「…それに…」



私は、座間さんから目をそらした。



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