ツンデレくんを呼んでみた。
「で、病院に行ったのよ。そしたら、ホルモンバランスが崩れたせいだって」

「…………は?」

「けっこう女の子の体ってデリケートなんだよねー。ちょっとしたことですぐ生理止まっちゃうことあるし」

「…………えと」

「大丈夫。妊娠してなかった」


中出の手からスマホがごとりと床に落ちた。そして、中出が深いため息をついた。


「…………驚かせんな」

「あれ、もしかして妊娠したと思った?」

「今の流れは疑ったわ」

「いやあ、あたしも病院行く前けっこう考えちゃってさ。中出にどう言おうかとか、親にどんな顔して帰ろうとかさ。でもよかったよ」

「……何が?」

「え?」

「何がよかったって?」

「今妊娠しなかったことが。まだ学生だし、金もないし、赤ちゃんに無駄な苦労かけさせなくてよかったなって」

「……ふうん」

「もちろん中出との赤ちゃんは欲しいけど、さすがに今は無理だなあって」

「……何言ってん」

「そりゃ、好きな人との赤ちゃんは欲しいよー。今すぐってわけにいかないから、ちょっと寂しいけど」


何となく笑ってみた。


きっと、少しだけ悲しいのだ。


安心したけど、同時に寂しくて悲しかった。


素直に喜ぶことなんてできない。


卒業したらあたし達は離れ離れになってしまう。


きっと、あたし達はこの先、違う人達と出会って結婚して、もしかしたら子供もそれぞれにできるかもしれないのだ。


そう考えたらやはり純粋に喜ぶことはできなかった。


「でも、妊娠して中出に責任取れなんて勝手なことも言えないしね。やっぱりこれでよかったんだよ」


自分に言い聞かせるようにあたしは笑ってみた。


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