ツンデレくんを呼んでみた。
気が変わったとか言って、それからすぐ帰って行った中出を見送って、あたしは一人でご飯を食べた。


昨日スーパーで安売りしていたがんもどきの煮物とご飯と味噌汁。


今日も泊まって行かなかったなあと、つけっぱなしのテレビを見ながらぼんやりと思った。


中出はたまにここの部屋に泊まる。研究やテスト前の勉強で夜遅くなったりして、帰るのが億劫になったり終電がなくなったりするとふらっと現れるのだ。
(車は持っているけど、使うのは大抵休日で、普段大学へは電車を使っているのだ)


それも、本当にたまにだけど。一ヶ月に一度か二度程度。日付が変わるか変わらないかの時間にチャイムが鳴って、部屋に入れるとベッドに直行。そのまま熟睡。


次の朝に起きてシャワーを借りてって、そのまま大学に向かう。


寝ることが目的であたしの部屋に来るから、いかがわしいことは一切ない。ベッドが一つしかないから、あたしは寝る場所がなくて中出が寝てる布団に潜り込んで一緒に寝るけど、本当に何もない。キスの一つもない。


休みの日はたまにあたしの家に来て一日一緒に過ごすけど、それでも本当にそういう雰囲気になったことは一度もない。あたしからキスをすることはたまにあっても、中出からは絶対しない。


中出ってなんであたしと付き合ってるのかなあなんて、たまに思う。


でも、今のままでも十分平和だし幸せだから、何も言わない。


電子レンジで温めたがんもどきは、少しだけ冷たかった。


もう少し温めればよかったと思いつつ、立ち上がるのが面倒でそのままがんもどきを飲み下した。


聞いてみたいと思うけど、そういうことを言って中出に嫌われたくないという思いもあると思う。むしろこっちの方があたしの中では強い。


安心と恐怖の中にいる今がベストだと思う。他にサンプルがないからこれが正しいかはわからない。


そんなことを自分に言い聞かせて、かれこれ一年が経とうとしていた。


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