ツンデレくんを呼んでみた。
その三日後、日付が変わる直前に家のチャイムが鳴った。


廊下のモニターを見ると、中出が家の前に立っていた。


風呂上がりで濡れた髪のまま玄関のドアを開けると、いつもの調子で「泊まらせて」と言ってきた。


「寒いね。さっさと入りな」


中出を中に入れて頬に触れてみた。だいぶ冷たい。


「ご飯は?」

「食べてきた」

「風呂は?」

「入る」

「どうぞーあたし入った後だからまだお湯張ってるからね」


あたしは部屋に戻って、中出はそのまま洗面所に向かった。


いつだったか中出が持ち込んだ男性用の洗面道具は風呂場に置きっぱなしにしているし、着替えは中出の気まぐれで持ってきたり持って来なかったりするけど、あたしに洗濯させることは一切ない。


あたしは風呂場という場所とタオルを提供すればいいだけなのだ。


あたしは生乾きの髪をドライヤーで乾かした。真っ黒で染めていない髪は胸の下まであって、乾かすのに時間がかかる。


乾かすのは面倒だけど、今の長さがうっとうしいとは思わないから切ろうとは思わない。


そういえば、中出がどんな女の子が好みだとか今までそういうものを聞いたことがない。


髪が長いのが好きなのか、短いのが好きなのか。女の子っぽい子が好きなのか、ボーイッシュが好きなのか。あたしは中出の好みを一切知らない。


まあ、見た目に特別こだわりがないあたしと付き合っているあたり、中出も外見はあまり気にしないのかもしれない。
(だからといって惹かれる中身を持っているわけでもない)


顔も中身もそこまでだけど、なんとなくで惹かれ合っているカップルも中にはいるかもしれない。そう自分に言い聞かせることにした。


ようやく乾かし終えた頃、中出が風呂から上がってきた。


濡れた髪と紅潮した頬と、コンタクトを外して眼鏡をかけた姿が普段より色っぽく感じて、あたしはまともに中出の顔が見れなかった。


「髪、乾かすでしょ?」

「ん」


ドライヤーを渡す時に「あたしが乾かしてあげようか?」と冗談めかして笑ったら、すごい形相で睨まれた。


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