ツンデレくんを呼んでみた。
「人の気も知らないで。断るのけっこう辛いんだからね」

「確かに奈子、人の頼み断れないタイプやもんな」

「そうだよ。会えば普通に話すから余計に辛いよ。家に上げる気もないけど」

「じゃあいいやん。上げなければ」

「だけど、断っても懲りずにほぼ毎日送られてくるからさあ。会いたいなら外で会おうって送ってみたこともあるけど、外は嫌ですって来たし」

「何それ。明らかにヤリ目じゃね?」


あたしが薄々感づいていたことを中出があっさり口にして、ぐっと口をつぐんだ。


ヤリ目(もく)とは、ヤリ目的のことで、要するに肉体関係を持つことが目的で近づいているということだ。


ていうか。


「……あんたがその単語を知ってるとは思わなかった」


何となくあたしが恥ずかしくなって、胸の内がじわりと熱を帯びる。


ふとした瞬間に自覚する、中出が男という事実。


実際するかしないかは別として、男だからそれなりに知識は持っているんだろう。中出だって例外ではない。


そんなことわかっていたはずなのに、目の前にいる中出が急に知らない男に思えてくる。


中出はそれから何も言わなかった。あくびを漏らしながらスマホをいじっている。


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