ツンデレくんを呼んでみた。
「……なんであたしなんだか」


あたしは好意を持たれていることに素直に喜べなかった。相手にあからさまなヤリ目的が滲んでいることではなくて、決して美人ではなくぱっとしないあたしがなんで好かれるのだろうと疑問なのだ。


あたしは中出と付き合うまで、彼氏はおろか男に好かれたことが一切なかった。


「世の中いろんな人間がいるからな」


中出がぽつりと呟いた。


中出と付き合ったときは、両思いになれたことがただ嬉しくて、そんなことを考える余裕がなかったのが正直なところだ。でも、最近はすごく聞きたい。


どうしてあたしの傍にいるの?


「顔はともかく、押しに弱いって思われてんじゃねーの」

「顔はともかくってひどくない? 否定はしないけど」

「やれれば誰でもいいってやつかもな」

「ああ、とりあえずガンガン押せば折れてくれるだろうってか」

「実際は引くほどの変態やけど」

「褒め言葉として受け取っておくよ」


変態なのも否定しないけど、引くほどを頭に付けるのはさすがにひどくないですか?


中出をちらりと見ると、顔色を一切変えずにスマホの画面を見ていた。よく見ると片方の耳にイヤホンがついていた。


「何聞いてんの?」

「動画」


中出が短く答えたけど、あたしは何となく覗く気になれなくてほっといた。


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