ツンデレくんを呼んでみた。
「……ねえ」

「何」

「あたしは中出以外の男に乗り換える気はないから」

「何その宣言」

「聞かれないから言ってみた」

「あほくさ」


少しは彼女を心配しないのかと思ったけど、それが中出なのだから仕方ない。無頓着なのだ。


立ち上がってタオルを廊下の洗濯機の中に投げつけた。


何となくモヤモヤしていた。


ばかだな。心配して欲しいって思うなんて。


部屋に戻ったら、中出は布団に潜り込んで既に寝ていた。


あたしはスマホを少しいじってから部屋の電気を消す。


ベッドをちらりと見て少しためらったけど、中出が寝ている布団に潜り込んだ。


起きるんじゃないか、怒られるんじゃないかと毎回ドキドキして、覚悟を決めて布団に潜らないといけない。自分の布団だというのに。


前に抱き着いたまま寝たらうっとうしいと怒られたけど、一緒に寝たことに関しては何も言われなかったから、たぶん許されているのだろう。


それでも少しだけ、寝ている中出に気を使ってしまうのだ。


あたしはこちらに背を向けて寝ている中出にくっついた。首筋に鼻を近づけると、中出の匂いがした。柔らかくて甘いのに、どこか男っぽい。


「……おやすみ、駿哉」


普段は呼べないその名前を呟いてみた。当然中出から反応はない。


頬にキスして、中出に背を向けて目を閉じた。


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