ツンデレくんを呼んでみた。
どうすれば諦めてくれるのだろうか。


頭の隅が痛み出してきた。


ふと、この間中出が言っていたことを思い出した。


『ヤリ目』という単語。


中出が言うと妙に生々しく聞こえてしまうのは、今思い出しても同じことだった。


童貞なのかな、この子。


これは風の噂か何かで聞いたことだけど、大学生になっても童貞であることを恥ずかしいと思う男は少なくないらしい。


それさえ卒業できれば、彼女ができなくともなんでもいいという人も中にはいるのだろう。中出は絶対そういうのにこだわりはないと思うけど。


つまり、一回やっちゃえばこんなにしつこいのもなくなるのかな。ていうか、ここまでしつこく言い寄られてるってことは、あたしってそんなに簡単にやれる女だって思われてるのかな。


確かにあたしは普段目立たない方だし、眼鏡をかけているからおとなしいと思われるのも無理はないだろう。まさか実際は中出がドン引きするくらい変態だなんて思いもしないだろう。


「……ねえ、なんで、あたしの家に行きたいんの?」

「え? いや、それは、ほら、えっと…………」


もごもごと言葉を濁すけど、「家」という単語があたしの口から出た途端、山崎の目がキラキラと輝き出したのがわかった。


どちらかといえばギラギラ。


うわあ、これ家に連れ込んだら即襲われるやつだ。


自分の貞操の危機に瀕しているのに、あたしはどこか他人事のように考えていた。


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