ツンデレくんを呼んでみた。
山崎の部屋を出て、目に入った階段を下りるとすぐに道路に出た。


あたしは傍の壁にもたれ掛かった。息が切れていた。


ドクドクと心臓がうるさい。


ブーツを履き直してまた走った。山崎に追いかけられて捕まることだけは避けたい。


少し走って、さっきの壁が見えなくなったのを確認して立ち止まった。


ここまで来れば大丈夫なはずだ。あの家からは見えない。


「…………どこだ、ここは」


口にして気がついた。


ここは集合住宅の密集地だった。忘れていたけど以前山崎は大学の近くのアパートに一人暮らしをしていると言っていた。


それが本当なら、あたしの家もわりかし近い気はする。けど。


寒い、と思ったらコートを着ていなかった。見ると服だって乱れている。


こんな格好で夜道を走っていたのかと恥ずかしくなった。すれ違った人はいなかった……はず。


あたしは道端で鞄を地面に置いた。それからぐるりと辺りを見回して、誰もいないことを確認してコートを羽織った。乱れた衣服を簡単に直す。裾が長いロングコートでよかったかもしれない。それからマフラーを首に巻き付ける。


服越しにブラを直そうと思ってその部分に触ったら、さっきの山崎の舌の感触を思い出した。


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