ツンデレくんを呼んでみた。
とは言え、一ヶ月もそんなことをしていたら、さすがにばれた。


「こないだから気になっとったけど、一体何なん?」


さすがの中出も感づいていたらしい。


あたしの部屋でスマホをするするといじる中出の手を見て、床に置かれている反対の手を見て、今だと思った。そろそろと手を伸ばしてみたけど、やっぱり妙に恥ずかしくなって引っ込めた。そんな一連の流れを、中出はがっつり見ていたのだ。


こちらを向いた中出は笑いを堪えていた。


普段無表情が多い中出が表情を崩すのはレアだけど、そんなことを気にしている余裕はなかった。


あたしは白状せざるを得なかった。顔を真っ赤にしながら、手を繋ぎたい旨を10分くらいかけて打ち明けた。


なぜか心臓がバクバクしていた。なんだか焦って余計に顔に熱が集まる。


「だ、だって、あたし達、そういう…………き、キス…………とかはしてるけど、そ、その…………手を、繋いだりとかは…………してなかったな…………って思って。あたし、えと、その……………だから、つまり……………」


みたいな話を延々と続けたもんだから、中出は怒るよりむしろ爆笑していた。


「どんだけ照れてんの」


手なんか勝手に繋げばいいやんと中出は簡単に言ったけど、簡単にできないからこんなことになってんだろうが。


「キスは自分からするくせに。変なとこでウブやな」

「最初にやっちゃってるから……たぶんいろんな意味で吹っ切れてんのかな」


そう言ってあたしは再びそろそろと中出の手に手を伸ばした。お許しを得たから、あとはあたしが行動するだけだった。


中出はそれをわかっていながら自分から手は出さなかった。そんなんだからあたしは自分からしなきゃいけないってのに。


ようやく中出の手に自分の手を重ねた。ゆっくりと握ると、中出もゆっくりと握り返してくれた。


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