ツンデレくんを呼んでみた。
「何、して……」


中出がキスした?


なんで?


「見てられんわ。こんなぐっちゃぐちゃになってんの」

「……誰のせいだと思ってんのよ」

「俺のせいって言いたいのか」

「他に誰かいますか」

「知らん」


中出の唇が再び瞼に触れる。それから目尻に落ちて、頬の涙を吸った。


口は悪いのに、どうしてこの唇はこんなに優しいのだろう。


「……くすぐったい」

「泣くのが悪い」

「泣かせたのはどこのどいつよ」

「そんなに俺が好きか」

「大嫌い」

「意地っ張りが」


中出の腕が腰に回って引き寄せられる。ぐっと体が密着して、あたしは中出の顔が見れなくなった。


「嫌なら抵抗しろよ」

「……できるわけないでしょ」

「なんで」

「あたしが、中出を嫌いになることなんてない…………中出があたしを嫌っても、絶対ない」

「ずいぶん言い切るな」

「中出が、いい……から」


また涙が溢れる。


お願いだから止まってよ。中出にめんどくさいなんて思われたくない。呆れられたくない。


手でいくら拭っても、涙はあたしの意思に関係なく流れ続けた。


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