ツンデレくんを呼んでみた。
「……言いたいことがあるんなら言えば」


口をつくんだあたしに、中出がこちらを見ずに呟いた。


あたしはぎゅっと唇を噛みしめた。


たぶん顔に出ている。中出に不満があること。


というか、これで不満がない方がおかしいだろう。


朝からいらいらする。


「……少しくらい心配してくれたっていいじゃん」


ぽろっと出た言葉は中出の耳に届いたかはわからない。


中出は動かなかった。


それっきりあたしは何も言えなかった。これ以上何か中出に話したら泣いてしまいそうだった。


いつだってあたしのことは他人事で、何も思わないのか。ならば、どうしてあたし達は付き合っているんだろう。


あたしが傲慢なのか。


自分でもわからない。


「慰めて欲しいなら慰めてやるけど」


中出が眠そうなとろんとした口調でのたまった。


「心にもない言葉をかけてやるよ」

「…………最低」


あたしは中出の胸を拳で叩いて、そのままもたれかかった。


「慰めなくていいよ。代わりに今だけ許して」

「それ、この間も聞いた」

「そんなことしか言わないんなら何も言わなくていい」


あたしは引き剥がされないように中出の服の裾を掴んだ。


中出の口から出ることが本音ばかりではないことはわかっていても、憎まれ口ばかり叩かれていつでもそれを聞き流せるわけじゃない。


聞き流せないくらい気が滅入っている時だってある。


< 68 / 104 >

この作品をシェア

pagetop