ツンデレくんを呼んでみた。
「あたしもウブだったなあ……」


あたしは半年前ここで交わしたやりとりをぼんやりと思い出した。


客観的に見ても、主観的に見ても、とても進展が遅いあたし達。


ていうか、一年も彼氏の方から本当に何もしてこないってどういうこと? 大抵のキスがあたしからってどういうことですか?


まあ、こいつは絶対自分からしないタイプなんだろうなとは付き合う前からわかっていたから、今更不満なんて口にしないけど。あたしも肉食な方だから、自分からしても嫌ではないし。


それにしても、たまーにはいいじゃないですかね。頻繁にとは言わないから、せめて半年に一回くらいは中出からちゅーしてくれても罰は当たらないと思うのですが。


まあでも、あたしのキスやその他行動を拒否る素振りは一度もないから、まだいいのか。これで拒否られたら心が折れているところだ。


そう考えたら、まだ幸せな方か。むしろ、中出が隠れMだと考えれば気が楽か(以前言ってみたら、すごい形相で睨まれたけど)。


大学三年生の冬。あたし達が出会った部活を引退して、そろそろ卒業した後の進路を本気で考えなければならない。就活は三月からであと二ヵ月近くあるから、なんとなくのんびりしている。


ご飯を食べ終えて、カフェオレを啜る。ちらりと中出に視線を向けると、スマホをいじりながらうとうととしていた。


「中出、眠いの?」

「……言ったやん」

「寝てもいいよ。あたしのベッドでいいなら」


と言ってみたけど、中出は眠いときはあたしのベッドだろうが床だろうが平気で寝る。けっこう神経質そうなのに。


「……ん」


中出はベッドに移動して布団にくるまってすぐに寝息を立てて寝始めた。


これはおそらく、一応懐かれていると思っていいのだと思う。



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