ツンデレくんを呼んでみた。
無頓着
あたしは店内をぐるりと見回して、男女比率が同じくらいになっていることに気づいた。


「何かさ、いつも思うけど」


あたしは熱いカフェモカを啜りながらぽつりと呟いた。


某有名コーヒーチェーン店の店内の木製のテーブルに、あたしと向かい合って座っているのは中出だ。


中出はマンゴーフラペチーノのトールサイズ(量はかなり多いと思う。冬なのに腹冷やさないのかな)を飲み干して、市販のものより二回りくらい大きいシナモンロールを三口で平らげていた。


「世の中のカップルって、どうしてこうもデートに行きたがるもんなのかね」

「知らん」


中出は短くそう言って、あたしが買ったアップルパイに手を伸ばした。


「あー、あたしの大好物なのに!」

「ドンマイ」

「ドンマイじゃなくて、あんたが食べてんだろうがあ!」


あたしが抗議しているうちに中出の口にあっという間に吸い込まれていくアップルパイを見て、あたしは肩を落とした。


中出は華奢な見た目に反して大食いで甘いもの好きである。


「もーいつも人の食べ物取ってくんだから……」

「うまかった。ごちそーさん」

「……半分だけ残されてもね」


中出は半分より更に減ったかじりかけのアップルパイをあたしの皿に戻した。これでも中出なりの配慮らしい。


まあ、残してくれただけありがたいけど。いやそういうことじゃない。


あたしはそのアップルパイを頬張った。少しだけ温めてもらったパイは、まだほんのり温かかい。


< 9 / 104 >

この作品をシェア

pagetop