ツンデレくんを呼んでみた。
「ちょ…………やめろ」


中出があたしの肩を掴んで離れさせた。


わずかに息を荒げた中出は頬を紅潮させていた。


その姿を見て、あたしはにっと笑ってみた。


まるでこの間を逆転したようだ。


「あたしのキスは下手だから感じないんじゃなかった?」

「感じてねえ……」

「顔赤いけど、自覚ある?」

「この酔っ払い……」

「中出は心配しないだろうけど、あたしはいつも心配してんだから」


あたしは中出に馬乗りになったまま呟いた。


「中出は重いって言うかもしれないけど、付き合ってて不安じゃない人なんていないよ」

「俺はそこまで意志薄弱じゃねえよ」

「わかってるけど、そういうことがないなんて言いきれない」

「今まさに貞操の危機を感じてるけど」


どいたどいた、と中出があたしの体を押して体を起こした。


「だから誰かにやられる前にやっちゃおうって」

「だから、俺はそんなにひ弱じゃねえし、お人よしでもないからそんなの絶対しねえって」

「わかんないよ。仮にAV女優に迫られても中出の中出が止まらなくならない自信なんてある?」

「あー、めんどくせーな」


中出が嫌そうに顔を歪めて、前髪をかきあげた。


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