ツンデレくんを呼んでみた。
「ん?」


その違和感はあたしの腰をぐっと中出に引き寄せてきた。


「な、中出?」


慌てて中出の顔を見上げると、中出は目を開けてあたしを見下ろしていた。


違和感の正体は中出の手だった。


「相変わらず無防備やな」

「へ?」

「『ガッツガツの肉食女子が、家に連れ込んでベッドに押し倒してちゅーして』……だっけ」

「は?」

「さっきの、俺が襲われるシチュエーション」

「……はい?」


何を言っているんだこいつは。


意図がわからなくて中出をじっと見つめていると、腰の手が離れた。


「その肉食女子って、自分のことやないの?」

「あたし?」

「さっき、そっくりそのままされたけど」

「…………あ」


中出に言われて気付いた。


全然意識していなかったけど、言われてみれば確かにそうだ。


家に連れ込んで、押し倒して、キスした。


「つまり、俺に警告してくれたってことけ?」

「ああ……うん……なんていうか、そう、なのかな……?」

「言っとくけど、俺、やられっぱなしじゃ済まさないから」

「え?」

「あんなんされたら、やり返したくなるし」


中出があたしの背中に手を回して抱きしめてきて、あたしは息を詰まらせた。


自分からくっつくことはあっても、密着させられることはなかったからどうすればいいのかわからない。


呼吸の方法さえわからなくなる。


あたしは普段どうやって息を吸って吐いていたっけ?


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