君が為
心配そうに眉を下げる永倉さんに、私は薄く微笑みを浮かべてみせる。
今回のことは完全に私が悪いし、隊務で忙しい永倉さんにこれ以上迷惑を掛けたくなかった。
永倉さんは私の気持ちを察したのか、穏やかな笑顔を向けて、大盛りの御飯を頬張ってみせた。
私も、手を合わせて温かいお味噌汁を口に含む。
料理なんて、家庭科の実習以来で崩壊寸前だったけど、今は横を向いててもみじん切りができるようになった。
うん、ちゃんと出汁も効いてるし……美味しいかも。
ふと、何処からか視線が向けられた。
その視線に最初に気付いたのは、永倉さん。
誰にも悟られないように、永倉さんは私に耳を寄せた。
「……新見さん、お前のこと睨んでないか」
私は片頬を歪ませながら、お茶を啜る。
苦味があるお茶と一緒に、溜息を飲み下した。
局長の一人である新見 錦さん。芹沢さんの側近みたいな人で、様々な雑務をこなしているらしい。
初対面の時同様、私のことを嫌っている。
それはもう、清々しいほどに嫌われていた。
私と隊務が重なると邪魔しかしてこないし、何かといちゃもんを付けては騒ぎ立てる。
皆が居ない所に来ると、素を曝け出して暴言を吐く始末。
此処までされると、もう真剣に相手をするのが面倒くさい。
今だって……。
「………」
無言で睨みつけてくる新見さん。
そんなに見たって、何にも出ませんよーだ。