君が為
「藤堂さん……沖田さんも」
襖の向こうにいたのは、裾に手を入れた沖田さんと、柱に身を預けた藤堂さんだった。
二人とも芹沢さんに向かって、一礼する。
「芹沢先生、この子貰って行きますから」
「わっ!!?」
沖田さんはまるで子猫でも持つかのように、私の襟首を引っ張った。
そして、ぽいっと投げられる。
尻餅覚悟で眼を瞑ったものの、いつまで経っても痛みは襲って来ない。
恐る恐る眼を開けると、呆れ顔をした藤堂さんとバッチリ眼が合った。
「重い」
固まってフリーズする私に、藤堂さんはそう吐き捨てた。
今度は違う意味で固まりたくなるものの、ずっとこうしているわけにもいかず、身体を起こした。
どうやら藤堂さんを下敷きにしていたらしい。
「あの……すいませんでした」
「別に…」
藤堂さんはクルッと身を翻して廊下を進んで行く。
眼、合わせてくれなかった。
やっぱり稽古の時のこと、まだ怒ってるんだ。
当たり前だよね。
私はそこまで出掛かった溜め息を呑み込むと、二人の後を追った。
角を曲がる時、新見さんとすれ違ったけれど、無視。
今は新見さんなんかに構ってる暇ないんだから。