Epithalamium
「そ、そうだな。それはそうと、神々といえば、聖教皇もおみえになっていたな。うん。それならば先祖がダメだと言うはずはないな」
今回の式の司祭を勤めるのは聖教皇であるベネディクトゥス8世。その聖教皇がすでに王城に到着していることを思い出したアルフリートは、ようやく安心したような顔をしているのだった。
「では、これより一言も口をきかれてはなりませんぞ。わかっておられますな」
「わかっている」
ゆっくりと歩いているうちに二人は、霊廟の前にまで来ていたのだ。レックスはアルフリートにそう言っている。そこへやって来た神官はアルフリートに恭しく一礼する。そして、重々しい口調で問い掛けているのだった。
「アルフリート様、代々の御霊とのご対面のお覚悟はできておりますか」
その問い掛けに彼は大きく頷いている。それをみた神官は道をあけ、導きの言葉を口にしていた。
「それではこちらへ。御霊がこの婚儀を承諾せぬ時はその場ですべての儀式を取りやめさせていただきます」
神官の声に思わず何かを言いたそうにしているアルフリート。しかし、ここで口を開けば何もかもが終わりだということもわかっている。彼は口を一文字に閉じると代々の王の霊廟へと入っているのだった。
その場の空気はヒンヤリとしている。そして、国の礎をつくり、育ててきた代々の王の存在を感じるのだろう。さしものアルフリートも真剣な面持ちでいる。
やがて、神官に導かれて彼が立ったのは始祖の王の廟。とりたてて変わったことは起こらなかったが、何か暖かいものを感じたという表情をアルフリートは浮かべていた。それをみた神官は一様にホッとしたような声をあげている。
「始祖王はこの婚姻を認められました。あちらにて沐浴とお召しかえを」
神官のその言葉に、アルフリートは安心すると同時に緊張も感じていた。それは、これから始まることが国をあげての祝賀であることを彼が実感した時だったからだろう。
そして、アルフリートが歴代の王の霊廟に参っているその時。
花嫁であるセシリアは神々からの託宣の時を迎えていた。もっとも、それを告げるのが神竜である、とわかった時の彼女の表情は複雑なものでもあった。
「どうして、あなたがここにいるのかしら」
『お前も変わらんのぉ。儂のことは覚えておるじゃろうに』
「覚えているから、そう言っているのですわ。それよりも託宣ですか? この婚姻は認めないとかいうのがあればいいんですが」
今回の式の司祭を勤めるのは聖教皇であるベネディクトゥス8世。その聖教皇がすでに王城に到着していることを思い出したアルフリートは、ようやく安心したような顔をしているのだった。
「では、これより一言も口をきかれてはなりませんぞ。わかっておられますな」
「わかっている」
ゆっくりと歩いているうちに二人は、霊廟の前にまで来ていたのだ。レックスはアルフリートにそう言っている。そこへやって来た神官はアルフリートに恭しく一礼する。そして、重々しい口調で問い掛けているのだった。
「アルフリート様、代々の御霊とのご対面のお覚悟はできておりますか」
その問い掛けに彼は大きく頷いている。それをみた神官は道をあけ、導きの言葉を口にしていた。
「それではこちらへ。御霊がこの婚儀を承諾せぬ時はその場ですべての儀式を取りやめさせていただきます」
神官の声に思わず何かを言いたそうにしているアルフリート。しかし、ここで口を開けば何もかもが終わりだということもわかっている。彼は口を一文字に閉じると代々の王の霊廟へと入っているのだった。
その場の空気はヒンヤリとしている。そして、国の礎をつくり、育ててきた代々の王の存在を感じるのだろう。さしものアルフリートも真剣な面持ちでいる。
やがて、神官に導かれて彼が立ったのは始祖の王の廟。とりたてて変わったことは起こらなかったが、何か暖かいものを感じたという表情をアルフリートは浮かべていた。それをみた神官は一様にホッとしたような声をあげている。
「始祖王はこの婚姻を認められました。あちらにて沐浴とお召しかえを」
神官のその言葉に、アルフリートは安心すると同時に緊張も感じていた。それは、これから始まることが国をあげての祝賀であることを彼が実感した時だったからだろう。
そして、アルフリートが歴代の王の霊廟に参っているその時。
花嫁であるセシリアは神々からの託宣の時を迎えていた。もっとも、それを告げるのが神竜である、とわかった時の彼女の表情は複雑なものでもあった。
「どうして、あなたがここにいるのかしら」
『お前も変わらんのぉ。儂のことは覚えておるじゃろうに』
「覚えているから、そう言っているのですわ。それよりも託宣ですか? この婚姻は認めないとかいうのがあればいいんですが」