Epithalamium
高い天井の聖堂。その中を聖教皇ベネディクトゥス8世の声が響き渡っている。ここで物音を立てるのは異議があると表明すること。そのことは、この場にいる誰もが知っている。だからこそ、その場は水を打ったように静まり返っていた。
「アルフリート殿下。ハートヴィル侯爵令嬢。お二方に異議はございませんな。沈黙をもって婚姻の成立を宣言する」
聖教皇の言葉に反対する声も物音も聞こえない。ただ、絶え間なく鳴り響く鐘の音だけ。そして、そんな様子をみていた聖教皇は神官が捧げている誓約書を手元に引き寄せていた。
「それでは、こちらにサインを。これにより侯爵令嬢は、グローリア王家の一員として神々の祝福を受けられます」
差し出されている誓約書。それにアルフリートとセシリアが順にサインをする。それを見届けた聖教皇は、重々しい声で婚姻の成立を宣言していた。
「世界を創られた創世神。グローリア代々の御霊。そして、この場に集うすべての人々。それらの承認のもと、この婚姻の成立を宣言する。今よりの異議は一切、認めることはない。王家に祝福あれ」
聖教皇の声に鐘の音がひときわ大きくなる。それは、外にいる人々に婚姻の成立を伝える役割もあるのだろう。それまで静かだった空気が一気に熱を帯びたものに変わったような感じがする。
そして、それは聖堂の中でも同じこと。それまでの沈黙が嘘のように、歓呼の声が湧き上がっている。そんな中、アルフリートはセシリアにそっと囁いているのだった。
「この場でもう一度誓う。君を一生涯、愛し守り続ける。決して嘘ではないと信じてほしい」
その言葉と共にアルフリートはセシリアに指輪をはめている。それは、永遠の愛を誓う形でもある。それを受けとらざるをえないとしかいえないセシリアはどこか複雑な表情を浮かべていた。それでも、彼女の顔にはどこか吹っ切れたような色がないわけでもない。
「お受けいたしましたわ。でも、この誓いは守ってくださいませ。もし、破られたらその時は……」
「その時は?」
セシリアが何を言うかと思っているアルフリート。その彼に彼女はそっと囁いているのだった。
「私はあなたを許しませんわ。そのことは覚えていてくださいませ」
そう囁くと彼女は周りの歓呼の声にこたえている。それは、セシリアが自分の未来を決めた時だったのだろう。
~Fin~
「アルフリート殿下。ハートヴィル侯爵令嬢。お二方に異議はございませんな。沈黙をもって婚姻の成立を宣言する」
聖教皇の言葉に反対する声も物音も聞こえない。ただ、絶え間なく鳴り響く鐘の音だけ。そして、そんな様子をみていた聖教皇は神官が捧げている誓約書を手元に引き寄せていた。
「それでは、こちらにサインを。これにより侯爵令嬢は、グローリア王家の一員として神々の祝福を受けられます」
差し出されている誓約書。それにアルフリートとセシリアが順にサインをする。それを見届けた聖教皇は、重々しい声で婚姻の成立を宣言していた。
「世界を創られた創世神。グローリア代々の御霊。そして、この場に集うすべての人々。それらの承認のもと、この婚姻の成立を宣言する。今よりの異議は一切、認めることはない。王家に祝福あれ」
聖教皇の声に鐘の音がひときわ大きくなる。それは、外にいる人々に婚姻の成立を伝える役割もあるのだろう。それまで静かだった空気が一気に熱を帯びたものに変わったような感じがする。
そして、それは聖堂の中でも同じこと。それまでの沈黙が嘘のように、歓呼の声が湧き上がっている。そんな中、アルフリートはセシリアにそっと囁いているのだった。
「この場でもう一度誓う。君を一生涯、愛し守り続ける。決して嘘ではないと信じてほしい」
その言葉と共にアルフリートはセシリアに指輪をはめている。それは、永遠の愛を誓う形でもある。それを受けとらざるをえないとしかいえないセシリアはどこか複雑な表情を浮かべていた。それでも、彼女の顔にはどこか吹っ切れたような色がないわけでもない。
「お受けいたしましたわ。でも、この誓いは守ってくださいませ。もし、破られたらその時は……」
「その時は?」
セシリアが何を言うかと思っているアルフリート。その彼に彼女はそっと囁いているのだった。
「私はあなたを許しませんわ。そのことは覚えていてくださいませ」
そう囁くと彼女は周りの歓呼の声にこたえている。それは、セシリアが自分の未来を決めた時だったのだろう。
~Fin~