オタ恋っ!
それは優しい君の味。
川崎と話すようになってから二ヶ月がたった。
ーー……
「っへっっっくしっっ!!!」
鼻水が垂れそうになって、急いでティッシュで鼻を押さえる。
「やだ、あず。風邪かー?」
「なのかなー…あ、でも最近寝不足」
「寝不足で風邪になんの?」と、馬鹿にしたように栞里が笑う。
「…どうだろ」
鼻に押さえたティッシュのせいで、声がヘリウムガスを吸った後のような声になったが、そんなことはどうでもよかった。
ーーちーん
ああー…鼻かみすぎて鼻がいたい。
「うちマスク持ってるよ?あげよっか?」
「ありがとー」
栞里がマスクを取り出すためにリュックの中を漁っている時、何やら遠くで聞き覚えのある声が聞こえた。
「…ゃが崎っ」
その声は昼時の教室に溶けてしまったが、耳のいい私は聞き取っていた。
「川崎じゃん、どうした?」
聞こえたんだ、よかった。
そんなことを考えているのか、ホッとした川崎はため息をついた。
「…ちょっと」
教室の入り口で話すと邪魔になってしまうかもしれない、ということを配慮したのか。
川崎は入り口から少し離れたところに私を引っ張っていった。
「谷ヶ崎、風邪引いたのかもしれないと思って、…コレ」
渡されたのはのど飴がたくさん入った袋だった。