私が恋したのは女の子でした。
「あかりちゃーん」

 翌日、教養棟の前を一人で歩いていたら、そんな声をかけられた。

 友達でもないのにずいぶん馴れ馴れしいな……。

 そう思って声のした方を向くと、そこにはたかなしくんがいた。

「あかりちゃんだったよね? 僕間違ってないよね?」

 話しかけてくれる彼は、笑顔だけど、ちょっと不安そう。

「あ、え、えっと……たかなしくん」

「か・え・で」

 そう言い直しさせられても……。

 知り合ったばかりなのに、その距離感は戸惑ってしまう。

「なんで昨日メール返してくれなかったの? 僕、待ってたのに」

 綺麗な顔を歪めてむくれる彼。

 う、うーん。

 こうして目の前にすると、やっぱりかっこいいな……。

 なんで私、この人を無視してしまったんだろう。

 文字だけのやり取りって怖いな。
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