私が恋したのは女の子でした。
 大学の講義は高校と違って教室が広い。

 教授だって一人一人チェックなんかできないだろう。

 だけど、だからって遅れていいわけじゃない。

 わかってる。わかってるよ……。

 わかってるんだけど、私は寝坊した。

 一限の開始時間は8時40分。

 私が起きたのは8時35分。

 間に合うわけがない……。

 ろくにメイクもできずに、てきとーなファッションで講義室に向かう。

 住んでいるのは大学のすぐそばのアパートだから、5分で行けるけど……。

 一人暮らしってリスク大きいな。

 講義が始まっている室内に、できるだけ静かに侵入する。

 思った以上に学生の数が多くて、空いている席が少ない。

 私は後ろの方の、窓際の席に目をつけた。


「すみません、ここ、良いですか?」

 荷物でふさがれている席を指差して、その隣に座っている男性に声をかけた。

 勿論、講義を邪魔しない程度の小声。
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