私が恋したのは女の子でした。
 叫びたかった。

 驚きを大声で表現したかった。

 でも、こらえた。

 必死で声を抑えた。

 周りの人に注目されるようなこと、しちゃ駄目だ。

 そんな理性が、私を縛り付けた。

「え……? ほ、本当なの?」

 できるだけ小さな声で、私はかえでくんに確認した。

 彼は……ううん、彼って言って良いのかわからない。

 その人は、重大な秘密を私に話した反動か、椅子の背もたれにぐったりと張り付いていた。

「本当。なんならあとで身体触っても良いよ。すぐわかるから」

 吐き出すように呟く声は、こんなときなのにすごく色っぽく聞こえた。

 そんなかえでくんはすごくつらそうで……胸が締め付けられる。
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