私が恋したのは女の子でした。
 私は立ち止まった。

 すると、やっぱり足音が止まる。

 怖くなった私は、カーブミラーを進行方向に見つけ、鏡越しに後ろを確認した。

 フードを深くかぶったグレーのパーカーを着た男。

 男だとわかったのは、ちらりと無精ひげが見えたから。

 まずい! そう直感した私は、スーパーの袋を手に提げたまま、走り出した。

 その他の荷物は背中にしょっている。

 中に入っている筆箱がカタカタうるさく鳴る。

 後ろの男も走って追いかけてくる。

 怖い……! 助けて……!! 

 でも、人通りの少ない寂しい田舎道。

 誰にも助けを求められない。

 周辺の民家で明かりがついている家はなく、助けを呼べそうにもない。

 そんな危機的状況で、私は致命的なドジを踏む。

 脚がもつれて転んでしまったのだ。

 後ろから男が迫る。

 最悪……!! 

 嫌……!! 誰か……!!! 

 助けて神様……!!!! 
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