私が恋したのは女の子でした。
「い、いえいえ、そんな。私なんかそんな……」

「ねえ、名前教えてよ。僕、小鳥遊(たかなし)楓(かえで)」

 「僕」って言うんだ……。

 ああ、でも、似合わないこともないか。

 男の人って「俺」って言うイメージしかなかったけど、面接とか以外でも「僕」って使う人いるんだね。

 私はそんなことを考えて、深く気にも留めなかった。

「月見里(やまなし)朱莉(あかり)……です……」

「へー! あ、もしかして、その苗字って変わった字書くんじゃない? ケイタイで教えてよ。ほら、変換機能でさ」

 なんでわかったんだろう? 

 私の名前を声で聞いた人は、大抵「山梨」だと決めつけるのに。
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