私が恋したのは女の子でした。
「あかりちゃん」

 下を向きながら歩いていた私は、懐かしい声に顔を上げた。

「かえでくん……」

 無表情で何を考えているのかわからないかえでくんがそこにいた。

 笑ってくれれば良いのに……。

 怖いよ……。

 何を言われるかも見当がつかない。

 ううん、むしろ……。

 また責め立てられるんじゃないかって思ってしまう私。

 身構える私に、かえでくんはゆっくり近付いてきた。

「久しぶりだね。元気にしてた?」

 そこで初めてかえでくんは微笑んでくれた。

 あれ……? 何だろ……? 

 私を責めるつもりじゃないの……? 
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