私が恋したのは女の子でした。
「やっぱり僕、あかりちゃんのこと忘れられないんだ」
 
 そう告げられたのは、授業が終わったあとのこと。
 
 授業中は真面目に私語もせずに、
黒板と教授の顔に向けていたかえでくんの視線。
 
 それが、今は真っ直ぐに私に向かっている。
 
 正直、苦しい。
 
 あんな別れ方をしたのに、今更こんなふうに迫られても……。
 
「もう僕のこと嫌い?」
 
「嫌いなんて……」
 
 嫌いなわけない。
 
 好きだよ。
 
 切ないくらいに大好きだよ。
 
 でも、そういう気持ちってなかなか口に出せないものだと思う。
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