私が恋したのは女の子でした。
 短い着信音が一人暮らしの部屋に響いて、私は料理の手を止めた。

 料理と言っても、簡単なもの。

 切った野菜を豚の小間切れ肉と混ぜて炒めるだけ。

 IH調理器のスイッチを切って、寝室兼食卓な部屋に向かう。

 冬にはこたつと化すちゃぶ台の上に、アンドロイドなケイタイは置かれていた。

「あー、メールならあとでも良かったか……」

 思わず独り言がこぼれる一人暮らし。

 寂しいよね、恥ずかしいよね、うん。

 でも、誰にも聞かれてないし、良いの。

 私はケイタイをタッチして、メールを確認する。

 差出人は不明。

 だけど、講義のあとの出来事もあったし、一応中身を確認する。
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