コイスルハナビラ SAKURA
「あ~、うち、バイトする予定なんよ」
「バイト?」
あたしは聞き返す。
これが漫画だったら、頭に『?』が浮かんでいるとこだ。
「そう。叔父さんの知り合いの遊園地で、人手が足りんから手伝ってーて」
「えーっ、遊園地! 楽しそう! 麻紀ちゃん、いいなぁ!」
すると、麻紀ちゃんは大きく首を振った。
「いいことない! 場所だって県外だから、何日間か泊まり込みだし……めちゃめちゃ遠いけぇ、新幹線も使うんよ?」
「そ、そんな遠いん?」
「うん……でも、色々お世話になってる叔父さんの頼みじゃけ、断れんのよ」
そう言って、麻紀ちゃんは遠い目をした。
その横顔は、どことなく大人びて見えた。
ほんの少し、麻紀ちゃんまで遠くに行ってしまった気がして、あたしの胸はチクリと痛んだ。