コイスルハナビラ SAKURA
浮かび上がろとする風船を、そうはさせまいと押さえつける街路樹。

その葉は、風に吹かれて大きく揺れている。

葉が揺れるたびに、風船はその呪縛から逃れようと動く。

風船が再び宙を舞うのは、そう遠くないと思われた。


その矢先!


「!!」


一陣の強い風が、あたしたちの間をすり抜けた。

風は、激しく葉を揺らす。


「あっ!!」


風に揺れた葉をあざ笑うかのように、風船は葉をすり抜けた。

そして、再び空を目指して舞い上がる。

あたしたちの口からため息が漏れた。


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