コイスルハナビラ SAKURA
「……でもね!」
不意に振り向く麻紀ちゃん。
「バイト代は、めちゃめちゃいいんじゃあ!」
そう言って、麻紀ちゃんは笑った。
その笑顔は、あたしの心の曇り空に染み渡っていく。
「うち、帰って来たら駅前のアイス屋で、嫌ってほどアイス食べる予定なんよ!」
夢を語るその目は、とてもキラキラと輝いていた。
「さくら! ……その時はあんたも付き合いんさいよ! うちが、おごっちゃるけぇ!」
やっぱり、麻紀ちゃんは麻紀ちゃんだ。
あたしの切ない暗雲は、きれいに吹き飛んでいた。
「ん? 何よ? そんな嬉しそうな顔して」
麻紀ちゃんは不思議そうな表情を浮かべ、あたしの顔を見つめる。
「なんでもな~い!」
あたしは、ワザとおどけたように答えた。
教室の窓から見える大空は、今のあたしの心のように、青く青く澄み渡っていた。