コイスルハナビラ SAKURA

「たくと君かぁ……」


確認の意味も込めて、あたしは名前を繰り返した。

猫さんは、立ち上がる。


「名前もわかったことだし……あたし、迷子センターに報告してきます」

「そうだな……迷子センターに報告はしておかないとな」


うなずく若林さん。


「じゃあ、ボクと一緒に行こうニャ!」


そう言って手を伸ばす猫さん。

でも、男の子は激しく首を横に振った。


「ひょっとして……この近所ではぐれたのかも……」


麻紀ちゃんが口を挟む。


「だから、自分がここにいないと、探しに来た人がわからなくなっちゃうからって……」

「あ~、なるほど」


その言葉に、みんな納得の表情を浮かべた。


「でもなぁ……」


若林さんは頭をかく。

猫さんと一緒に行って大丈夫だよ、と、いくら説明しても、男の子は首を縦に振らなかった。


< 154 / 186 >

この作品をシェア

pagetop