コイスルハナビラ SAKURA
「たくと君かぁ……」
確認の意味も込めて、あたしは名前を繰り返した。
猫さんは、立ち上がる。
「名前もわかったことだし……あたし、迷子センターに報告してきます」
「そうだな……迷子センターに報告はしておかないとな」
うなずく若林さん。
「じゃあ、ボクと一緒に行こうニャ!」
そう言って手を伸ばす猫さん。
でも、男の子は激しく首を横に振った。
「ひょっとして……この近所ではぐれたのかも……」
麻紀ちゃんが口を挟む。
「だから、自分がここにいないと、探しに来た人がわからなくなっちゃうからって……」
「あ~、なるほど」
その言葉に、みんな納得の表情を浮かべた。
「でもなぁ……」
若林さんは頭をかく。
猫さんと一緒に行って大丈夫だよ、と、いくら説明しても、男の子は首を縦に振らなかった。