コイスルハナビラ SAKURA
「あはははは……でもさ~」
麻紀ちゃんはひとしきり笑うと、再びあたしの髪に視線を向けた。
「髪、伸ばそー思った理由って、涼介だっけ?」
「うん! 半年前、涼ちゃんがね……」
あたしの顔が『にへっ』と緩む。
そんなあたしに、麻紀ちゃんは『やれやれ』と、ため息をついた。
そんな麻紀ちゃんの様子も気にせず、あたしは言葉を続けた。
「涼ちゃんが、長い髪が好みって言うけぇ」
あたしは、指で髪をそっととかした。
良く手入れされた髪は絡まることはなく、サラサラと指の間をすり抜けていった。
「今日は、これから会う約束してるんよー!」
そう言いながら、あたしは帰り支度を始めた。
「はいはい……ご馳走様」
ウキウキした気持ちが見てわかるあたしに、麻紀ちゃんは苦笑いを浮かべた。
「早よ、行ってあげにゃ~」
「うん、それじゃ、このまま涼ちゃんのトコ行くけぇ、またねっ!」
支度が終わったあたしは、鞄をつかむと教室から慌ただしく飛び出した。
「あ、そうそう、さくらーっ!」
あたしを追いかけて、麻紀ちゃんも廊下に飛び出した。
「うち、明日出発するけんねーっ!!」
廊下に麻紀ちゃんの声が響き渡る。
あたしは、その言葉を背中で受け止めた。