コイスルハナビラ SAKURA
「俺は卒業するんじゃけ、仕方ないじゃろ?」
「それは……そうじゃけど……でも、寂しいもん!」
「寂しいって言われても……」
そう言って、涼ちゃんは大きなため息をつく。
「だって……これからは毎朝一緒に行けなくなるもん……」
「さくら……!」
急に真面目な顔になる涼ちゃんに、あたしの心臓は大きく脈打った。
「な、何?」
「今日は俺の門出なんよ? そんな日に笑って送り出してくれんのか?」
「う……」
そう言われると痛い。
これじゃ、あたしは単なるワガママな子だ……
うつむくあたしに、涼ちゃんはふっとその表情を緩めた。
「寂しいのは、俺も同じじゃけ……な?」
そう言って、あたしの頭をポンポンと優しくなでた。
「……それにな、さくら。一人暮らしって言ったって、同じ市内なんよ?」
「……うん」
「そんな顔するなや! 会う気になればすぐ会える距離じゃん!」
そう言って涼ちゃんは笑った。