コイスルハナビラ SAKURA
「……わかった」
あたしは、ゆっくりと顔を上げた。
その言葉に、涼ちゃんはホッとした様子を見せる。
そして、制服のポケットから折り畳まれた紙を取り出した。
「ほら、これ」
「……何?」
あたしは、手渡された紙を広げる。
そこには、紙一面に地図が描かれていた。
「これが、あたしの学校……で、これが涼ちゃんの大学……」
あたしは、地図に描かれた建物を次々と指差してく。
その中に、ペンで塗りつぶされ『ココ』と書かれた箇所を発見した。
「涼ちゃん、これって……」
「そう、俺が住むアパートの地図。これで1人でも来れるじゃろ?」
「……ありがとう、涼ちゃん!」
あたしの顔は、自然と笑みが浮かんでいた。
「あたし、涼ちゃんの引っ越し手伝うけん!」
細い腕に力こぶを作る真似をするあたし。
「……え~と」
涼ちゃんは、また頭を無造作にかく。
でも、あたしはそれに気付かなかった。