コイスルハナビラ SAKURA
第5話『Heart』
「さくら……」
麻紀ちゃんは、短くなったあたしの髪にショックを受けているようだった。
「髪……涼介のために伸ばしてたんでしょ……? なのに何で……」
そこまで口にして、麻紀ちゃんはハッと口を押さえた。
「ま……まさか……」
「……うん……涼ちゃんに……振られちゃった」
あたしは笑った。
麻紀ちゃんにこれ以上、心配かけたくなかったから。
「あ、別に気にせんといて! あたしは、全然平気じゃけぇ!」
あたしはしゃべり続ける。
「髪? あ、これは3年生になるし……イメチェンしようかなって!」
麻紀ちゃんに、安心してもらえるように━━━
「涼ちゃんのことだって、幼なじみの延長みたいなものだし……」
自分自身に言い聞かせるために━━━
「だから……全然平気なんよ?」
あたしの、弱い心を隠すために……
「もう……麻紀ちゃん、怖い顔しすぎだよぅ」
あたしは笑った。
悲しみをこらえ、今できる最高の笑顔を麻紀ちゃんに向けて。
あたしは笑ったんだ……