コイスルハナビラ SAKURA
「あの~、麻紀ちゃ……」
「さくら! 急いで準備してっ!」
あたしの声は、麻紀ちゃんの大きな声で遮られた。
部屋のクローゼットを勝手に開けて、大きなバッグを引っ張り出そうとする。
「ちょ、ちょ、ちょちょっと! 準備ってなんなん?」
慌てるあたしに、麻紀ちゃんは笑顔で答えた。
「あんたは……うちと一緒にバイトするんよ!」
「……あ~、そういうこと……って、ええっ!?」
な、なんで、そんな唐突に!?
「家に1人でいるより、うちと一緒にバイトした方が気が紛れるって!」
え~……
そんな、強引なぁ……
「バイトって言っても簡単な仕事じゃし……」
麻紀ちゃんは、人差し指を立てた。
「それに、今までにない、新しいモノが見つかる旅になるかもよ?」
う~、学校では大変だ~とか言ってたくせにぃ……
そう思いながらも、30分後には身支度を整え終わったあたしがいた。
最初はあまり気乗りしなかったんだけど……
麻紀ちゃんの強引な誘いと……
涼ちゃんとの思い出がつまったこの街を、少しの間出たかったということと……
何より、あたしの大切な何かが見つけられそうな気がして、あたしは引き受けることにしたのだった。