コイスルハナビラ SAKURA
「ところで、おばさま!」
麻紀ちゃんは頃合いを見計らったかのように、パンと手を鳴らす。
「うち、これからバイトなんですけど……」
「聞いてるわよ。新幹線で、しかも4泊5日もなんよねぇ」
お母さんは、感心したようにウンウンと2回うなずいた。
「それでですね……」
指と指を絡め、祈りを捧げるようなポーズでお母さんを見る麻紀ちゃん。
「バイト、1人欠員が出たみたいで……さくらに代役をお願いしたいと思ってるんですけど……」
「……代役? ……さくらが?」
お母さんは、少し困った表情を浮かべ、あたしと麻紀ちゃんを交互に見た。
当然と言えば当然の反応。
いきなり4泊5日のバイトと言われて、二つ返事で送り出す母親なんていない。
でも……このまま、ただ悲しみに溺れて過ごすのはイヤ……
悲しみの海に沈んだままじゃ、あたしの宝物は見つけられない気がするから……